SREのAI/DXブログ_実務に活かせるAIに関する情報

DevOpsのベストプラクティス:成功への5つのステップ

作成者: SREホールディングス / 山下祥吾|2023/12/01 7:03:12

はじめに

DevOpsの重要性とビジネスへの影響

現代のビジネス環境は、デジタルトランスフォーメーション(DX)とAI導入が進む中で、ますます競争が激化しています。このような状況で起業が競争力を維持、あるいは拡大するためには、ソフトウェア開発と運用の効率化が欠かせません。ここで重要なのが、DevOps(DevelopmentとOperationsの合成語)です。

DevOpsは、ソフトウェアの開発(Development)と運用(Operation)のプロセスを効率化し、連携を強化するための文化、運用モデル、および実践のセットです。DevOpsの採用によって、製品のリリースサイクルが短縮され、持続可能な高品質のソフトウェアを提供することが可能になります。これは、顧客満足度の向上、オペレーショナルコストの削減、そして市場への迅速な対応といったビジネス価値に直結します。

本記事の目的:DevOpsのベストプラクティスを5つのステップで解説

この記事では、DevOpsのベストプラクティスを5つの具体的なステップで解説します。これらのステップは、プランニングからコードの品質保証、継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリー(CD)、そして監視とフィードバックループに至るまで、DevOpsのライフサイクルを網羅しています。

各ステップで紹介するベストプラクティスとツールは、DevOpsを効果的に導入し、ビジネス価値を最大化するための実用的なガイドラインとなるでしょう。

 

ステップ1:プランニングとコラボレーション

プロジェクトの目的とスコープの明確化

DevOpsを成功させる第一歩は、プロジェクトの目的とスコープを明確にすることです。これにより、開発と運用の両チームが共通のゴールに向かって効率的に作業できます。目的が明確であれば、それに基づいてKPI(Key Performance Indicator)を設定し、プロジェクトの進捗を定量的に測定することができます。

開発と運用チームのコラボレーション方法

DevOpsは、開発と運用が密接に連携する文かを推進します。この連携を実現するためには、定期的なミーティング、共有ドキュメント、チャットツールなどを活用して、両チーム間のコミュニケーションを促進することが重要です。また、障壁を取り除くために「ブレイク・ザ・サイロ(壁を破る)」という考え方も有用です。

ツールの選定:Jira、Trelloなど

プランニングとコラボレーションを効率化するためには、適切なツールの選定が不可欠です。例えば、Jiraはタスクトラッキングやスプリントプランニングに優れています。一方で、Trelloはビジュアルなカンバンボードが特長で、プロジェクトの全体像を一目で把握できます。ツールはプロジェクトのニーズやチームのスキルセットに応じて選ぶべきです。

ステップ2:コードの品質保証

コードレビューの重要性

DevOpsの文化において、コードの品質は非常に重要な要素です。コードレビューは、その品質を確保する最も効果的な手段の一つです。開発者が新しいコードをリポジトリにプッシュする際、他の開発者がそのコードをレビューします。このプロセスによって、バグの早期発見、コーディングスタイルの統一、そしてより効率的なコードの実装が可能になります。

自動テストの導入

コードレビューと並行して、自動テストの導入もまたコード品質を高めるために欠かせません。自動テストによって、コードが予期した動作をするかどうか確認できます。特に、継続的インテグレーション(CI)の環境下では、新しいコードがマージされるたびにテストが自動的に実行され、即座にフィードバックが得られます。

ツールの選定:GitHub、GitLab、Jenkinsなど

コードの品質保証においては、適切なツールの選定が重要です。GitHubやGitLabは、コードレビュー機能が充実しており、多くの開発者にとって標準的な選択肢となっています。Jenkinsは、自動テストとビルドを管理するための強力なツールです。これらのツールは、コードの品質を一元的に管理し、チーム全体でのコラボレーションを促進します。

ステップ3:継続的インテグレーション(CI)

CIの概念とメリット

継続的インテグレーション(Continuous Integration、CI)は、開発者が頻繁にコードを一元的なリポジトリに統合するプラクティスです。このプロセスでは、各マージが自動的にビルドされ、テストが実行されることで、コードの品質を維持し、エラーやバグを早期に発見します。CIの導入によって、開発サイクルが高速化し、大規模なエラーや障害のリスクが軽減されます。

自動ビルドとテストの設定

CIを効果的に運用するためには、自動ビルドとテストの設定が必要です。これにより、新しいコードがリポジトリにプッシュされると、自動的にビルドとテストが実行されます。この自動化によって、開発者は即座にフィードバックを得ることができ、品質の高いコードを維持することが可能になります。

ツールの選定:Travis CI、CircleCIなど

CIを実施するには、多くのツールが存在しますが、その中でもTravis CIやCircleCIは広く用いられています。Travis CIは、GitHubとの連携が強く、設定が容易です。CircleCIは、高度なカスタマイズが可能で、大規模なプロジェクトにも適しています。ツールの選定は、プロジェクトの規模、ニーズ、そして技術スタックに依存します。

ステップ4:継続的デリバリー(CD)とデプロイメント

CDの概念とメリット

継続的デリバリー(Continuous Delivery、CD)は、ソフトウェアがいつでも信頼性の高い状態でリリースできるように、ビルド、テスト、デプロイメントのプロセスを自動化する手法です。CDの導入により、新しい機能や修正を迅速にリリースすることが可能になります。これによって、顧客満足度が向上し、市場への迅速な対応が可能になるとともに、リリースに伴うリスクも軽減されます。

自動デプロイメントの設定

自動デプロイメントは、CDの核心的な要素です。コードがビルドとテストのフェーズを無事に通過した場合、自動的にステージング環境や本番環境にデプロイされます。この自動化によって、手動でのエラーが減少し、リリースプロセスが高速化します。

ツールの選定:Docker、Kubernetesなど

継続的デリバリーとデプロイメントを効率的に行うためには、適切なツールの選定が必要です。Dockerは、コンテナ化されたアプリケーションのビルドと運用を簡単にするツールです。Kubernetesは、コンテナオーケストレーションを行い、スケーラビリティと可用性を高めるための強力なプラットフォームです。これらのツールは、CDのプロセスを効率化し、高度な自動化を実現します。

ステップ5:監視とフィードバックループ

アプリケーションとシステムの監視

DevOpsのライフサイクルにおいて、アプリケーションとシステムの監視は不可欠です。監視によって、パフォーマンスの問題、エラー、セキュリティの脆弱性などをリアルタイムで把握し、迅速な対応が可能になります。これは、システムの可用性を高め、顧客体験を向上させるために重要です。

フィードバックループの設定

監視だけでなく、フィードバックループの設定もまた重要です。これにより、監視から得られたデータを分析し、その結果を開発と運用のプロセスにフィードバックすることができます。このフィードバックループは、継続的な改善と最適化を促進します。

ツールの選定:Prometheus、Grafanaなど

監視とフィードバックループを効果的に行うためには、適切なツールの選定が必要です。Prometheusは、高度なデータモデリングとクエリ言語を提供し、リアルタイムの監視とアラートが可能です。Grafanaは、監視データを視覚化し、ダッシュボードを通じて状態を一目で把握することができます。これらのツールは、監視とフィードバックのプロセスを効率化し、高度な自動化を実現します。

まとめ

DevOpsのベストプラクティスの重要性

この記事を通じて、DevOpsのベストプラクティスがビジネスに与える影響の大きさを理解していただけたでしょう。DevOpsは単なるツールやテクノロジーではなく、文化とプロセスの変革です。その成功は、プランニングからコードの品質保証、継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリー(CD)、そして監視とフィードバックループに至るまで、多くの要素に依存しています。

5つのステップを実践することで得られるビジネス価値

この5つのステップを実践することで、企業は製品のリリースサイクルを短縮し、品質を向上させることができます。これにより、顧客満足度が高まり、ビジネス価値が最大化されます。また、エラーや障害の早期発見と修正が可能になり、全社的なオペレーショナルコストも削減されます。

今後の展望:AIとDevOps、DXとの連携

DevOpsの未来は、AIやDXとの連携によって、さらに多くの可能性が広がっています。AIは、データ分析や自動化を高度化し、DevOpsプロセスをさらに効率的にします。DXとの連携によっては、企業全体のビジネスプロセスが最適化され、競争力が高まるでしょう。

参考文献

  1. ジーン・キム他.The DevOps ハンドブック 理論・原則・実践のすべて.日経BP,2017
  2. Lucy Ellen Lwakatare, Pasi Kuvaja, Markku Oivo. "An Exploratory Study of DevOps: Extending the Dimensions of DevOps with Practices". The Eleventh International Conference on Software Engineering Advances (ICSEA) At: Rome, Italy, August 2016
  3. Amazon (AWS). "DevOps とは?". 
    https://aws.amazon.com/jp/devops/what-is-devops/ , (参照 2023-09-05)